履歴書の法的性格
履歴書の法的性格に関しては、私の単なる知識不足かもしれないが、これまで表立った論点はない。そこで、民法の観点から、私なりに、履歴書の法的性格を論じてみようと思う。
まず履歴書の虚偽記載は、その記載が雇用契約の主要な目的に反しない限り、民法上の債務不履行もしくは不法行為とならないことはよく知られている。このことから考えると、履歴書の法的性格は非常に弱いものとみることも可能である。しかしながら、雇用契約は、一般法たる民法の、特別法の性格を有する労働法で主として保護すべき性質を具有している。他方、労働法の立法趣旨が、労働者の保護にあり、労働契約を維持する方向で法解釈がなされるべきことから、履歴書の虚偽記載が原則雇用契約の取消ないし撤回事由とならないのは、労働契約という特殊事情があるためだと分かる。従って、履歴書自体の法的性格は、一般的には、法律行為の一つと捕らえることが可能であると解する。さて、如上のように、履歴書の法的性格は民法上の法律行為の一つと見られるわけだが、法律行為の内実は何かが次に問題となる。この点、まず履歴書の送付が契約の申込に当たるかを考えてみるに、履歴書の送付が契約の承諾と法的な意味で対等な関係にあるとはみれない。けだし、履歴書だけで労働契約を結ぶことは実務上行われていないこと、労働契約書という法的文書において、申込者の意思表示と承諾者のそれとが合致することから考えて、履歴書に契約の申込に比肩するほどの法的効果を認めるのは、かえって労働契約の意味を曖昧にする恐れがあるからである。そうしてみると、履歴書の法的性格は、準法律行為もしくは契約の予約とみなすべきと考える。